一般社団法人の基礎知識

一般社団法人設立の方法・流れをわかりやすくポイント解説!

このページでは、一般社団法人設立手続きについて詳しく解説しています。

一口に、「一般社団法人の設立手続き」と言っても、

  • 少人数(2~3名)の社員(会員)でゼロから法人を立ち上げる場合
  • 任意団体としてある程度の活動の歴史があり、会員数も多い団体を一般社団法人に移行する場合

この2つでは、一般社団法人設立手続きの進め方において異なる点も出てきます。

既に長年活動を継続している学会・協会等の任意団体を一般社団法人へ移行する場合は、単なる新規の法人設立とは異なり、公証役場や法務局での手続き以外にも団体内部での機関決定を経る必要があるなど注意すべき点も多いです。

そこで、少人数で新規の一般社団法人設立する場合だけではなく、会員がそれなりに多い任意団体が一般社団法人に移行する場合の流れも含めて説明しています。

少人数(2~3名)でゼロから一般社団法人の設立を予定されている場合は、任意団体の法人化に関する項目は読み飛ばして頂いて差し支えありません。

専門家に頼らずに自力で一般社団法人を設立される方は参考にしてください。

なお、実務上の細かい注意点については、一般社団法人設立の注意事項も参照してください。

ちなみに、NPO法人から一般社団法人へ移行する際の流れも概ね同じです。

一般社団法人設立フロー(目次)

1.法人化するメリット・デメリットを検討する

ます、前提として、法人化するべきか否か、総合的に判断して決定する必要があります。

以下のメリット・デメリット等を検討して、法人化が望ましいとの結論になれば、次のステップです。

メリット デメリット
法に定められた法人として運営することにより、組織の根拠が明確になるため、任意団体と比べて社会的信用が増す
行政からの受託や、国外の機関との提携には、法人格が必須条件になっていることもあるが、そのような場合にも対応できる。
法律上定められた書類作成など事務手続きが増える。
経理処理は法人として行うことになるので、任意団体より難しくなる。決算や税務申告等のため税理士への委託費用等が増す。
名称の変更、目的変更、事務所の住所の変更などは登録免許税を払って法務局で登記の手続きが必要。
法人名で各種の契約(銀行口座の開設、事務所の貸借、従業員の雇用など)が行えるようになる。
(任意団体では銀行口座の開設など対外的な契約が代表者の個人名義で行わなければならないため、代表者が変わるごとに口座の名義変更が必要。)
法律の規制に従うことになるので、これまでの任意団体の運営ルールと異なる運営スタイルになる。
理事等の役員選挙、理事会や総会における議決の条件など、これまでの任意団体の運営の方法を変える必要が生じる。
損害賠償の責任も、原則として代表者個人ではなく、法人が負うことになり、代表者のリスクを軽減できる。
法人であれば、法人用の損害賠償保険にも加入できるため、その意味でもリスクが軽減できる。
法人化後は、これまで代表者個人で契約していた各種の契約(事務所の賃貸など)、を法人名義に変える事務手続きが改めて必要。

2.法人格の種類を選ぶ(社団型・財団型)

法人化が望ましいとして、では、どのような法人格を選ぶべきなのか。これが次の問題です。

非営利法人格の種類を2つに大別すると、社団型(一般社団法人)と財団型(一般財団法人)に分かれます。

(1)社団型が適している場合

協会・学会・同窓会・親睦会など、多数の構成員(会員)が存在し、会員から会費徴収し、会員による会議体(総会等)によって運営される方式の団体であれば、一般社団法人の選択が自然です。

(2)財団型が適している場合

一定の資金を元手に助成金や奨学金の支給など、資金交付型の事業を中心に行う団体の場合は、一般財団法人(財団法人型)を選択する方が自然です。

一般財団法人は、そもそも、財産に法人格を付与するという仕組みだからです。

(3)全体的な注意

社団型・財団型のどちらが適しているのかは、絶対的な基準はありません。最低必要な人数、資産等も加味して、実情に応じて選択することになります。

例えば、資金交付を行わない場合でも、社団法人型のように多くの構成員(会員)の意思を反映した組織運営するのではなく、少人数の役員等(理事・評議員)によって、意思決定し、事業活動を行いたい場合に、財団法人型は適しています。

逆に、資金交付型の事業を行う場合でも、多くの人が経営に参画する方式で運営したい(会員による総会など)場合には、財団ではなく、社団法人型を選択してもよいでしょう。

一般財団法人は、財産に法人格を付与するという制度の特性上、2年連続して純資産が300万円を切ると、自動的に解散状態になる点に注意が必要です

一般社団法人は、頭数が最低2名からでも設立でき、純資産がゼロでも設立できます。志を同じくした者が集まり、何か事業活動をしたい場合には、一般社団法人でスタートする方が、ハードルは低いです。

なお、「一般社団法人と一般財団法人の違い」については

→ 一般財団法人との違いについて

を参照してください。

<補足:NPO法人について>

NPO法人は設立手続も設立後の運営も煩雑です。新公益法人制度(一般社団法人制度)が施行以後は、もはやNPO法人制度は推奨できる制度ではなくなっています。

昔は、NPO法人以外に選択肢が無かったため、やむを得ずNPO法人を選択した団体が多かったのですが、新公益法人制度の創設によって、不便なNPO法人を選択する理由が無くなりました。

3.一般社団法人設立手続きの特徴を理解する

一般社団法人設立手続きには以下のような特徴があります。

  • 設立時社員は最低2名で足りる。
  • 設立時点は財産の拠出が不要なので、一般財団法人よりも低コストで設立可能。(一般財団法人は設立時に300万円以上の財産拠出が必要)
  • 最低限必要な機関は理事1名で足りる。理事会や監事の設置は任意であるため、機関設計の選択の幅が広い(5通り)。
  • 機関設計の選択の幅は次の5通りあるが、運営上のメリットがある機関設計は限られる。
    1. 社員総会+理事
    2. 社員総会+理事+監事
    3. 社員総会+理事+監事+会計監査人
    4. 社員総会+理事+理事会+監事
    5. 社員総会+理事+理事会+監事+会計監査人

理事会を設置する場合は、最低理事が3名必要となります。

実際のニーズとしては、1.「社員総会+理事」と4.「社員総会+理事+理事会+監事」の機関設計が多いです。

会計監査人を設置する義務がある一般社団法人は、貸借対照表の負債の合計額が200億円以上の極めて大規模な法人に限られるので、3と5は実際には稀なケースとなります。

4.機関設計選択のポイント

一般社団法人は理事会や監事の設置は任意であるため、一見すると、機関設計の選択の幅が広いように思えます。

しかし実務上、メリットがある機関設計としてお勧めできるのは、上記の4.「社員総会+理事+理事会+監事」であると言えます。

その理由は以下の通りです。

(1)非営利型一般社団法人の要件に注意

NPO法人と同様の税制上の優遇が受けられる非営利型一般社団法人として設立するためには、理事が最低3名必要です。

理事が1又は2名の一般社団法人は、非営利型法人としての要件を満たさないことに注意すべきですが、この点が意外と知られていません。

次の国税庁の解釈を参照してください。

4  一般財団法人においては、理事は3人以上でなければならないこととされている(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律653、1701、177)が、一般社団法人に置かなければならない理事は、1人又は2人以上とされている(同法601)。したがって、一般社団法人によっては理事が1人又は2人ということもあり得るが、この場合には、理事とその親族等である理事の合計数が理事の総数に占める割合は常に3分の1を超えることとなり、この要件に該当しないこととなる。換言すれば、一般社団法人にあっては、少なくとも3人以上の理事が置かれていなければ非営利型法人にはなり得ないということになる。

(国税庁HPより引用。平成20年7月2日付課法2-5ほか1課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明について>1 納税地及び納税義務【新設】(理事の親族等の割合に係る要件の判定)より)

これまで一般社団法人設立サポートを行ってきた経験上、一般社団法人の設立を希望される団体のほぼ100%が、NPO法人と同様の税制上の優遇措置が受けられる非営利型法人を希望されます。

そのため、小規模な一般社団法人であっても、理事3名は確保されるケースがほとんどです。

これに監事1名が追加できれば、理事3名(理事会設置)・監事1名の最小限の理事会設置型一般社団法人が設立できてしまいます。

このように理事会設置型一般社団法人のハードルはかなり低いため、多くの団体が理事会設置の一般社団法人を選択されます。

誤解が無いように補足すると、理事が3名以上いるからといって、理事会を設置する義務はありません。

理事が3名以上いても、理事会を設置しないことも法制度上認められます。

それにもかかわらず、当事務所にご依頼を頂く団体の多くが理事会設置型の一般社団法人を選択されるのには、非営利型法人を選択することに加えて、以下のような理由があるからです。

(2)協会ビジネスにおける組織のイメージ・信頼性の向上

一般社団法人を設立される方の多くが、非営利法人として活動することで対外的な信頼性向上させたいという目的があり、一般社団法人を設立されています。

近年では、いわゆる「協会ビジネス」が流行りですが、特に、検定事業・資格認定事業・セミナー事業等を実施する予定の団体様は、主催団体としての信頼性が重要になります。

「一般社団法人●●●●協会」等と名乗る団体が信頼に値する団体なのか、世間の人が調べようとしたときに、最も簡単な方法は、その法人の登記事項(登記簿)を法務局で調べることです。

現在は、法人の登記情報をインターネットで簡単に調べることができます。

⇒ 登記情報提供サービス

例えば、法人の登記事項を調べたときに、監事が設置されておらず、理事会も設置されてなかったとしたら、監事による監査も無い、理事会も設置されていないような小規模な団体だということは、簡単に見破られてしまいます。

小規模な法人であるほど対外的信用確保が至上命題となるため、協会ビジネスを始めようする場合、理事会+監事設置の一般社団法人として設立し、組織の規模や信頼感をアピールしようとする団体は少なくありません。

(3)理事会を設置した方が迅速な意思決定が可能

「理事会」という組織を設置すると、定期的に会議を開く義務があって面倒なイメージを持たれている方も多いと思います。

しかし、それは誤解なのです。

実は、理事会を設置した方が法人の運営が楽になります。

なぜなら、理事会という制度は、法人運営の重要な部分を理事会に任せることによって、法人の運営を機動的に行うための制度だからです(理事会を設置すると社員総会の権限を制限することができます)。

理事会を設置しない法人の場合、いわゆる「社員総会万能主義」といって、法人の様々な意思決定は全て社員総会で行うことになります。

これは大変煩雑です。社員が2~3名しかいない、極めて小規模な団体は別として、社員がある程度の人数に増えた場合、法人の迅速な意思決定は難しいといえます。

法人設立当初は社員が少なかったとしても、社員が増える予定のある団体であるならば、理事会を設置した方が迅速な意思決定が可能となるため便利なのです。

(4)公益認定(公益社団法人化)を目指す場合

一般社団法人設立に際して、「将来的には公益認定を目指したい」という希望がある団体は多いです。

やはり、社会貢献活動をされようとする団体の皆様には、少なからず、頭の片隅には公益認定(公益社団法人化)があります。

公益認定を受けて公益社団法人になるための要件には、理事会設置一般社団法人であることが要求されます。

法人設立後に理事会を設置しようとすれば、変更登記の手続きが必要になり、時間も手間も発生します。

そうすると、公益認定申請のための最低限の体制として、最初から理事会設置の一般社団法人にしておくという選択は合理的な選択だと言えます。

以上(1)~(4)のような視点を参考にしつつ、5通りの機関設計うち、どのタイプの一般社団法人を設立するのか選択する必要があります。

5.法人の名称・住所・事業目的等の基本事項の決定

法人の機関設計が決まった後は、一般社団法人を設立するために、以下の情報を決定しておきましょう。

① 法人の名称(商号)

(例) 一般社団法人●●●●協会

② 法人の主たる事務所の所在地

(例) 東京都中央区銀座一丁目○番○号

③ 法人の事業目的

(例)
この法人は○○及び○○によって○○に貢献することを目的とし、その目的に資するために、次の事業を行う。
1 ○○に関する事業
2 ○○に関する事業
3 その他この法人の目的の達成に資する事業

④ 設立時社員の氏名・住所(設立社員は最低2名必要です

設立時社員が法人の場合は、法人の登記事項証明書に記載されている商号・本店所在地を確認してください。

⑤ 理事の氏名・住所(理事会設置法人の場合は最低3名必要

理事が複数名いる場合は、その中から代表理事を決めておきます。

⑥ 監事の氏名・住所

監事を設置する一般社団法人を設立する場合には、監事の氏名・住所を確認しておきます。

理事会を設置する場合は、最低1名の監事が必要です。 

※氏名・住所の確認について

  • 設立時社員、理事及び監事の氏名・住所については印鑑証明書等の公的証明書の記載を確認してください。
  • 設立時社員が法人の場合は、法人の登記事項証明書に記載された、商号・本店所在地を記載を確認してください。

※機関設計上の注意

  • 法人は理事及び監事になれません。
  • 理事と監事は兼任できません。そのため理事会設置法人の場合は最低4名(理事3名・監事1名)が必要となることに注意してください。
  • 設立時社員が自然人の場合は、設立時社員が理事又は監事のいずれかを兼ねることができます。

6.管轄法務局での事前確認

法人の基本事項は既に決定されたとしても、いきなり定款作成等の書類作成に進むのではなく、申請予定先の管轄法務局の登記相談窓口で事前相談をします。

管轄法務局の場所が分からない方は、法務局のHP参照してください。

法務局のホームページ

⇒ http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/

専門家に法人設立手続きのご依頼をされずに、素人の方が自力で法人設立手続きをされる場合は、以下の項目について事前に管轄の法務局の相談窓口で確認した上で、定款の原案作成、公証役場での定款認証などに進むことをお勧めします。

  • 予定する法人の名称(商号)が登記可能な表記かどうか。
  • 主たる事務所の住所の表記は登記に適した表記かどうか。
  • 上記の名称(商号)で、予定する所在地に法人の登記が可能かどうか。
  • 予定している事業目的の表記が登記可能な表記かどうか。

法人の名称や事業目的の表現には一定の規制があるため、登記可能な表現であるか等を事前に法務局の相談窓口で確認しておく必要があるのです。

特に、非営利法人事業目的は、「明確性」の観点から問題になりやすいので注意が必要です。

事業目的に関する規制については、一般社団法人の事業目的変更のページも参照してください。

なお、管轄法務局で事前相談をした場合には、相談に応じた担当者の氏名を記憶しておくと、再度相談する際に便利です。

7.定款原案を作成する(法務局で確認した内容を前提に)

法務局での事前確認を終えた後は、法務局で確認した内容を前提にして定款の原案を作成します。

法人の名称(商号)・主たる事務所の所在地・事業目的の表記に関しては、法務局で事前相談で法務局側から認められた表現を使用します。

一般社団法人設立の書式ひな形等を利用して、設立予定の法人の実情にあわせて書式を適宜修正し、定款原案を作成してください。

8.作成した定款原案について、公証役場で事前確認を受ける

定款原案を作成した後は、正式な定款認証手続きの前に、作成した原案を公証役場で確認してもらいます。

作成した定款の原案に問題がある場合は、公証役場の公証人の指示に従って定款原案を修正します。

事前確認を受ける公証役場は、申請予定先の法務局に所属する公証役場を利用します。

公証役場の場所・連絡先が分からない場合は、公証人連合会のHPを参照してください。

定款内容に関する事前確認のため公証役場に行く際には、予め公証役場に電話をして、

  • 事前確認に際して何を持参すべきか?
  • 公証人が出勤しているのか?

この2点を確認しておくとよいでしょう。

出張等により公証人が不在の場合もあるからです。

事前相談に公証役場に行く際は、設立者の印鑑証明書(発行から3カ月以内のもの)も合わせて持参します。

設立時社員が法人の場合は、設立者の登記事項証明書と印鑑証明書(いずれも発行から3カ月以内のもの)を持参します。

直接公証役場に書類を持参する以外にも、FAX等のやり取りで定款原案を確認してもらうこともできます。

法人の名称や事業目的などについては、「法務局で事前相談済みです。」と公証役場に伝えると、公証役場での確認もスムーズに進みます。

定款原案の内容について、公証役場から了解を得たら定款内容の確定です。

後日、公証役場での正式な定款認証手続きに進みます。

9.任意団体での総会・理事会等で承認

定款原案について公証役場での確認を終えたら、任意団体の総会等(意思決定機関)で、受け皿となる一般社団法人の設立を決議します。

任意団体は、通常は、構成員(会員)による事業活動を行っていることが多いので、一般社団法人に移行する方が自然なケースが多いと思われます。

そこで、ここでは一般社団法人を設立する前提で説明します。一般財団法人化の場合も基本的には同じ流れです。

この任意団体の総会では、概ね以下の項目について承認を得ます(団体の実情により異なります)。

  • 一般社団法人の定款原案(公証役場で事前確認を終えた内容)
  • 一般社団法人の設立時社員(最低2名)候補の選任
  • 一般社団法人での役員(理事・監事)候補の選任
  • 一般社団法人設立後は、任意団体を解散すること
  • 任意団体解散に伴う清算人(清算事務を行う者)候補者を選任
  • 任意団体の残余財産は、一般社団法人に贈与すること

このような総会においては、任意団体の事務局や役員が、新しい法人への移行について法的な説明することになりますが、そのような法制度についての説明に自信が無い場合もあり、苦労される部分だと思います。

当事務所で法人化のお手伝いをする際には、全国から会員が集まる総会等に、法人化の専門家として行政書士が出席し、質疑応答に対応するサポートも行っています。

参考実例(写真付き)⇒ 日本手紙協会様の総会に出席、質疑応答に対応

10.一般社団法人の設立総会

先ほどの任意団体の総会等で、一般社団法人としての設立時の「社員」が決まりました。

このステップでは、一般社団法人の設立時の社員が集まり、一般社団法人設立上の重要事項を決定します。

通常、任意団体の総会と、一般社団法人としての設立総会は、出席メンバーが重複するはずです。

そこで、これらの会議は、同日に時間をずらして(午前・午後等に会議の時間帯を分けて)実施するのが多くの団体にとって便宜だと思われます。もちろん、別の日程で開催しても差し支えはありません。

一般社団法人の設立総会で決議する事項は以下の通りです。

  • 一般社団法人の定款※1
  • 一般社団法人の理事・監事の選任※2
  • 一般社団法人の初年度の事業計画・予算※3
<補足>
  1. 定款は設立時の社員が作成する(記名押印する)旨が法令で定められています。
  2. 後述する法人設立手続き上は、公証役場で認証を受ける定款に役員の氏名を記載し選任するという形式になる場合も多々ありますが、役員の人選は重要事項であるため、実態は、事前に設立時社員の総会で役員を選任して、役員候補者には予め就任の依頼をしておくことが多いと思われます。
  3. 事業計画・予算の承認を理事会の権限であるとする場合でも、設立初年度の事業計画・予算については設立時社員が決定すると定款の附則で定めることができます。

以上までのお膳立てが整えば、次は一般社団法人設立登記のための事務手続きです。

11.「定款認証(公証役場)」から「登記申請(法務局)」までの流れ(概要)

法人化のための重要事項は既に内部で意思決定されていますので、このステップでは、主に公証役場・法務局という役所へ書類を提出する事務手続きが中心になります。

世間一般で「一般社団法人設立手続き」といえば、このような役所への書類提出を意味することが多いと思いますが、これまで既に説明したように、このような役所への申請に至るまでに様々な検討や準備が必要になるのです。

STEP1:定款認証

設立時社員が定款を作成し,公証人の認証を受ける。

STEP2:役員の選任

設立時理事、設立時監事、設立時代表理事の選任を行う。

STEP3:設立手続きの調査

設立時理事(設立時監事が置かれている場合は,その者も)が,設立手続の調査を行う。

STEP4:登記申請

法人を代表すべき者(設立時理事又は設立時代表理事)が,法定の期限内に,主たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局に設立の登記の申請を行う。

STEP5:登記の完了

登記の申請後、概ね1~2週間程度で法務局側の処理が完了します。登記が完了したら、登記事項証明書と法人の印鑑証明書を法務局で取得します。

以上のような手続きに関しては行政書士のような専門家に依頼するか、市販のひな形・書式集を活用するのが便宜です。

以下のステップでは、具体的に公証役場や法務局での手続きの進め方を説明します。

12.定款を3通作成して押印する

公証役場で確認済みの定款を印刷し、ホッチキスで綴じて同じ定款3通製本したら、必要箇所に設立時社員全員が実印で押印します。(公証役場保存原本用1通・法人保存原本用1通・登記申請謄本用1通の合計3通必要になります。)

設立時社員全員が実印で以下の場所に押印します。

  • 各ページの綴り目にまたがる場所(差し替えや偽造を防止する措置・いわゆる「契印」)
  • 定款の末尾の設立時社員の氏名の右横(記名押印)
  • 定款の最終ページの上部又は下部の余白(「訂正印」として。訂正印が定款の最後のページに押してあると、仮に書類に作成ミスが発生しても、修正する際に楽です。)

13.公証役場での正式な定款認証手続き

ここまでの準備ができてようやく正式な「定款認証」の手続きに進めることになります。

正式な定款認証手続きの前には、予め公証役場を訪問する日時を予約しておくと便利です。

(予約が不要な公証役場でも、事前に予約してから行った方が待ち時間が少なくて済む場合が多いです。)

ここでは、最も原則な方法である、設立時社員が全員公証役場に訪問する場合について説明します。

予め予約しておいた日時に、設立時社員全員が公証役場へ次のものを持参します。

  • 設立時社員全員の実印で押印済みの定款3部
  • 設立時社員全員の印鑑登録証明書(発行から3ヶ月以内)※
  • 設立時社員の実印
  • 公証役場に支払う手数料 5万2000円前後(定款の枚数によって増減します。)

※設立時社員が法人の場合は、②の代わりに登記事項証明書と法人の印鑑証明書(いずれも発行から3ヶ月以内)

※注意

認証手続きを第三者に委任し、代理人が公証役場で認証手続きを行う場合は、以下の書類も合わせて必要になります。

  • 委任状
  • 代理人の身分証明書(運転免許証など)
  • 代理人の印鑑

委任状の書式や本人確認に必要な書類などは公証役場によって異なる場合があります。

詳しくはご利用の公証役場に事前に確認してください。

14.法務局登録用の法人の印鑑を作成する(業者に発注する)

定款の認証が終わったら、法務局に登録する「法人の印鑑」を作成します。いわゆる法人の実印です。

定款認証の前に法人の印鑑を作ってしまうと、万が一、定款作成途中で法人の名称を当初の予定から変えたくなった場合に、既に作った法人の印鑑が無駄になってしまいます。

そのため、法人の印鑑を業者に発注するタイミングは、定款認証が終わって法人の名称が正式に確定した後の方がお勧めです。

作成する印鑑の種類は以下の3点セットが一般的です。

  • 法人の実印(法務局に登録する印鑑)
  • 銀行印(銀行に登録する印鑑)
  • 角印(日常的な決裁等に)

下記サイトから「法人印鑑3点セット」希望と発注すれば、細かいサイズを指定しなくても、法務局の登録規格に適合した一般社団法人設立登記の申請に使用できるサイズの印鑑を作成できます。

一般社団法人実印作成サービス

参考→ 法人実印作成サービス

市場価格の30~50%OFFの格安印鑑から高級印鑑まで、法務局の登録規格に適合した印鑑をセットでご提供。

15.その他の申請書類・添付書類作成

一般社団法人設立書式ひな形等を活用して以下の書類を作成し、印刷して、必要箇所に押印します。

  • 一般社団法人設立登記申請書
  • 設立時社員の決議書
  • 理事、代表理事、監事の就任承諾書
  • 別紙※
  • 印鑑届出書

※「別紙」について

「別紙」については、テキストファイルで作成した上で、CD-R等に入れて、法務局に提出します。

16.管轄法務局に登記申請

管轄法務局の窓口に申請書類を提出します。申請した日が「法人の設立日」になります。

管轄法務局の場所が分からない方は、法務局のサイトを参照してください。

以下、法務局での行動手順を説明します。

(1) 申請日当日に必要なもの

  • 法務局に登録する法人の実印(何かあったときに、その場で対応できるので便利)
  • ホッチキス、クリップ
  • 印紙代6万円
  • 提出予定の以下の申請書類(必要箇所へ押印済みの書類)
  • 一般社団法人設立登記申請書
  • 定款(認証済みの謄本)
  • 設立時社員の決議書
  • 設立時理事、設立時代表理事及び設立時監事の就任承諾書
  • 設立時代表理事の印鑑証明書
  • 設立時理事・設立時監事の印鑑証明書(本人確認証明書を兼ねる)
  • 印鑑(改印)届書
  • 別紙のデータが入ったCD-R

(2)申請前に相談窓口で最終確認

既に書類は作成されていると思いますが、書類の不足や明らかなミス等がないか直前に相談窓口で書類をチェックしてもらいましょう。

(3)印紙6万円分を購入する

申請書類に問題がなければ、法務局の印紙売り場で、登録免許税6万円分の印紙を購入して、一般社団法人設立登記申請書の余白(申請日の日付の下など)にはります。

法務局に相談すると「印紙は別な台紙にはってください」等と指導されることがありますが、どちらでもかまいません。

(4)以下の書類をホッチキスでとめる。

  • 一般社団法人設立登記申請書
  • 定款(認証済みの謄本)
  • 設立時社員の決議書
  • 設立時理事、設立時代表理事及び設立時監事の就任承諾書
  • 設立時代表理事の印鑑証明書
  • 設立時理事・設立時監事の印鑑証明書(本人確認証明書を兼ねる)

※ 提出する印鑑証明書について

理事会を設置する場合、印鑑証明書を提出義務があるのは設立時代表理事の印鑑証明書のみです。

ただし、その他の役員については本人確認証明書(印鑑証明書や住民票記載事項証明書などの公的証明書)の提出が必要です。

代表理事以外の役員についても、本人確認証明書として印鑑証明書を提出しても差し支えありませんので、予め役員全員の印鑑証明書は取得しておき、申請書類における住所氏名の記載は印鑑証明書の表記に合わせておくと手続きがスムーズです。

(5) 他の書類とまとめて窓口に提出

ホッチキスで綴じた書類に、印鑑(改印)届書、別紙データの入ったCD-R(又はFD)を添えて窓口に提出。クリップで留めておくとよいでしょう。

(6)登記完了予定日の確認

登記の完了を法務局から連絡してはくれませんので、提出の際に登記完了予定日を法務局の申請窓口で確認しておきましょう。

何か修正が発生する場合は、登記完了予定日(補正日)までに法務局から連絡があります。

登記完了予定日(補正日)までに法務局から連絡がなければ、通常、登記は完了しているはずです。

17.登記事項証明書等の取得

登記が完了したら、必要に応じて登記事項証明書や印鑑証明書を法務局の窓口で取得します。

法人の印鑑証明書を取得するためには、まず「印鑑カード」を法務局で発行してもらう必要があります。

法務局に備え付けの「印鑑カード交付申請書」に必要事項を記入してを法務局の窓口に提出し、印鑑カードが交付されたら、印鑑証明書を取得します。

18.銀行口座の開設の申込み

法務局で登記事項証明書と法人の印鑑証明書を取得したら、その証明書を持って銀行に行き、一般社団法人名義の銀行口座開設の申し込みをします。

申し込みに必要な書類や、法人名義の銀行口座が開設できるまでの期間は、金融機関ごとに異なります。

法人設立の手続きと平行して、あらかじめ金融機関に、口座開設の相談をしておくとよいでしょう。

口座開設の申込み後、口座開設まで概ね2~3週間程度かかることが多いです。

法人として事業活動を行うためには法人名義での銀行口座の開設が必須ですが、特に最近は、法人名義の銀行口座の開設について銀行の審査が厳しく、銀行口座の開設までに時間が長期間必要になったり、口座開設を断られるケースも出ているので注意が必要です。

銀行口座がマネーロンダリングや振り込み詐欺等の犯罪に利用されるのを防ぐため、銀行側が「怪しいな」「不審だな」と疑いを持った法人からの口座開設を拒むようになっています。

法人として、やましいことは何も無かったとしても、審査をする銀行側の心証が悪ければ口座開設は拒否されてしまいます。

銀行口座開設をスムーズに進めるためには、以下のような資料を銀行から要求される前に、あらかじめ自主的に用意して提出するように心がけてください。

  • 法人の事業計画書・設立趣意書
  • 法人のパンフレット・事業概要書
  • 法人が運営するホームページを印刷したもの
  • 代表者の経歴書

このような資料を自主的に用意して、健全な事業を行う法人であることを積極的に銀行にアピールすることで、銀行口座開設の審査がスムーズに進みます。

19.事業(資産)の譲渡・任意団体の解散

一般社団法人設立後は、任意団体の事業とその事業に関する資産は一般社団法人が引き継ぐことになります。

具体的はプロセスとしては、任意団体と一般社団法人の間で事業譲渡契約を締結し、事業譲渡に伴い資産も一般社団法人に譲渡されることになります。

事業譲渡に伴い、任意団体名義でなされていた各種契約も一般社団法人名義の契約に切り替えることになります。

例えば、代表者(会長)個人名義で契約している事務所の賃貸借契約等も、法人名義の契約に切り替えます。

その場合、任意団体、一般社団法人、家主の三者の合意による契約締結が必要になることが多いので、あらかじめ不動産会社に相談しておきましょう。

一般社団法人設立後は、通常、任意団体は存続している必要性が無くなるはずですので、任意団体は解散し、任意団体の事業は終了となります。

任意団体の清算終了後、残余財産があれば、任意団体の総会の決定にしたがって、一般社団法人に残余財産を帰属させることになります。

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