一般社団法人の基礎知識

公益認定申請不認定事例の研究(営利企業と競合する事業)

概要

申請法人:一般財団法人アーネスト育成財団

公益目的事業としてまとめた5つの事業のうち、「事業資金の提供」の公益目的事業該当性が否定され、不認定となった事例

出典:内閣府公益認定等委員会の答申書(府益第973号平成27年10月2日)

なお、同法人が行った不認定処分に対する異議申し立ては、棄却されている。

出典:内閣府公益認定等委員会の答申書(府益第307号平成28年3月23日)

答申書のロジック要約

一般的に株式を取得しての資金提供は、営利を目的として行われるもので、営利企業が一般に行っているもの。

これを公益目的事業として認定するためには、営利企業では実施困難と認められるような事業の特殊性があり、かつ目的を達成するための合理的な手段であることが必要。

結論、申請法人の事業は、営利企業では実施困難と認められるような事業の特殊性があるとは認められない。→不認定

公益目的事業に該当するか?判断のポイント

公表されている内閣府公益認定等委員会の答申書(府益第973号平成27年10月2日)の説明を読むと、申請法人は、資金提供する事業の対象者(投資先)を選定する基準として「事業性を意識した投資先の選定を行うという以上の説明がなされていない」と内閣府から指摘を受けています。

事業実施のプロセスを抽象的にしか説明できていないようであり、「具体的な手法について説明がなく」と内閣府から指摘されています。

また、申請法人が行うとする資金提供や役員の送りこみによる人的な経営支援は、いわゆる「ハンズオン」として、民間のベンチャーキャピタルで既に行われているところです。

この点について、内閣府から「法人の説明のみでは、営利企業では実施困難と認め得るような事業の特殊性があるとは言えない。」と指摘されています。

さらに、一定割合の株式を長期に保有し、その議決権を背景に経営に影響を与え、又は人材を送り込むことが、「公益目的達成のための手段として合理性があるか疑義がある」と内閣府から指摘されており、このような疑念に対して「十分な説明がなされていない」と指摘されています。

考察

公益認定申請においては、達成すべき目的の必要性、手段の合理性について、抽象的な議論ではなく、具体的に説明出来る必要があります。

このことは、特別新しいことではなく、当事務所が公益認定申請のコンサルを行う際には、昔から意識していることです。

当事務所には、公益認定申請に失敗した法人(正式な不認定ではなく、申請を取り下げるように行政庁から指導を受けて諦めた法人)から相談が来ます。

そのような公益認定に失敗した法人の申請内容を見ると、「手段の合理性」について、具体的な説明が十分になされていないことがほとんどです。

公益認定申請では、申請法人が掲げる目的よりも、「手段の合理性」を重視して審査しています。こういう言い方を行政庁はしていませんが、当事務所の経験上は明らかです。

そもそも、公益認定申請を行う法人は、何からの意味で、公益性を帯びた事業目的を掲げます。

あきらかな私益目的、公益性が全くゼロのような目的を掲げて公益認定申請する法人はありません。

ですから、申請法人が掲げる事業の目的が、審査において深刻な問題になることは多くないのです。あとは、その公益(に見える)目的を、実現する手段として、事業内容に手段としての合理性があるか否か、そこが審査の焦点にならざるを得ないのです。

公益認定の申請書に何を書くべきか?

公益認定の申請書には、「事業内容に手段としての合理性がある」ということが、見ず知らずの第三者に理解されるような具体的な内容を記述する必要があります。

形式的な言葉遊びではなく、事業実施のプロセスが実質的に理解されるような説明が必要です。そのような説明が不十分な場合は不認定になります。

当事務所からのワンポイントアドバイス

営利企業と競合する事業だからといって常に公益性が否定されるわけではありません。

しかし、営利企業と競合する事業を行う場合は、通常のケース(営利企業とは競合しないような事業の場合)よりも、より具体的に、緻密に事業内容の合理性を説明する必要があります。

「営利企業では実施困難と認められるような事業の特殊性があり、かつ目的を達成するための合理的な手段」

この点についての立証が十分になされない限り不認定となることがこの事例から分かります。

また、この法人のように、公益性が否定されるようなリスクが高い事業を行いたい法人は、公益目的事業を1つにまとめずに、公益目的事業の複数カテゴリーを分けて申請する方が安全です。

あるいは、公益目的事業以外の事業(収益事業等)として申請を行う方がよいでしょう。複数の公益目的事業を一つにまとめて申請すると、そのうち1つの事業内容の公益性が否定されると、この事例のように全体の公益性が否定されてしまいます。

内閣府の答申書の結論にも書いてありますが、

「認定法第5条各号に掲げる公益認定基準の適合性の判断は、公益目的事業・収益事業・その他の事業の内容と範囲が具体的に画されていることを前提としており、申請に係る公益目的事業の中に、公益目的として認められないものが含まれている場合には、基準に適合するか否かの判断ができず、同条各号の基準に適合すると認めることはできない」

とされています。

仮に、当事務所が公益認定コンサルティングのお手伝いをしていたのであれば、この事例は、事業内容を分けて申請すべき事案だったと思われます。

そうすれば、他の事業内容に公益性が認められれば、公益目的事業比率50%をクリアして、公益認定を受けられた可能性があります。事実、この事例も、「事業資金の提供」以外の事業内容については、公益性が否定されるような指摘は内閣府から出ていませんでした。

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