一般社団法人の基礎知識

社団法人と財団法人の違い(比較)

一般社団法人と一般財団法人の違い

「一般社団法人と一般財団法人の違い」について簡単に知りたい方は

→ 一般財団法人との違いについて

を参照してください。

社団や財団が果たす機能・役割の本質的な違いを考える

社団法人と財団法人って何が違うのですが?

これから団体を法人化する場合、社団と財団のどちらがいいのですか?

こんな質問をよく受けます。

法律の教科書やインターネット上で良く見受けられる説明だと、「社団は人の集合で、財団は財産の集合である」

というような内容が書かれています。

まあ確かにその通りなんですけど、何を言っているのかよく分からないですよね(笑)

一般の市民が制度の違いを理解するのには、あまり役に立たない説明です。

  • 社団とは…
  • 財団とは…

みたいな定義の字面を読んでも、一般の方は社団と財団の違いは理解できないと思います。

では、社団と財団の違いを理解するためにはどうすればいいのかというと、社団や財団が果たす機能・役割の本質的な違いを考えればいいのです。

どのような法制度にも、「想定された使用場面」があります。

社団や財団がどのようなニーズを満たすために生じた制度なのか?

ということを考えればいいのです。

社団と財団では想定されている使用場面が異なるということです。

そもそも社団法人とは?

簡単に言うと、構成員(メンバー)が何人か集まった状況で、「団体(組織)として活動できたら便利だよね」というニーズを満たすために生まれた制度(概念)が社団法人です。

団体として活動するってことは、具体的に言えば、

  • 団体名義でオフィスの賃貸契約したり、
  • 銀行口座を開設したり、
  • 事業用に不動産を購入したり、
  • 人を雇用したりしたいわけです。

でも、法律の世界では、原則としてはそれはできないんです。

例えば、Aさん、Bさん、Cさんの3名が集まって団体X(仮称)として活動したいと思っても、事務所を借りたり、銀行口座を開設したりするには、「Aさん」や「Bさん」という個人の名義で契約することしかできません

そうじゃなくて、「団体X」として、事務所の賃貸契約をしたり、銀行口座を開設したりするようにするための仕組み「社団法人」という制度(概念)です。

「団体X」として、という意味は、「団体X」は構成員とは別の存在(権利義務の主体)だということです。

具体的には、団体の構成員(メンバー)が入れ替わっても団体として存続するということです。

仮に、「Aさん」・「Bさん」・「Cさん」が「団体X」を辞めて、新しく「Dさん」「Eさん」が「団体X」に加入したとします。

「団体X」のメンバーは設立当初から完全に入れ替わっていますが、「団体X」が社団法人であれば、「団体X」として事務所の賃貸借契約は問題なく継続しますし、銀行口座も問題なく開設したままです。

これが、社団法人が果たす機能・役割です。

いわゆる「会員制」の組織(●●協会や●●学会、同窓会など)を法人化するには、財団法人ではなく、社団法人を選択する方が自然です。

このような社団法人(人の集まり)が営利を目的した団体であれば、営利社団法人(株式会社、合同会社など)に分類されます。

また、営利を目的としない社団法人(人の集まり)であれば、非営利社団法人(NPO法人や一般社団法人など)に分類されることになります。

補足:「社団法人」という言葉の使われ方について

「社団(法人)」という言葉なのですが、実は使われる場面によっては意味が異なります。

そのために混乱している方もいると思うので、ちょっと補足です。

先ほど説明した「社団法人」の説明は、広い意味での社団法人という概念の説明です。

「財団法人」や「組合」概念と対になる比較概念ともいえます。

広い意味での「社団法人」には、非営利社団法人だけでなく営利社団法人も含まれます。

社団法人という言葉には、なんとなく非営利法人を連想する方もいるかもしれませんが、広い意味では株式会社も社団法人(人の集まり)なのです。

逆に、狭い意味での社団法人とは、廃止された旧民法の法人に関する規定に基づいて設立された社団法人(公益法人)のことを指していました。

民法が改正される前は、「社団法人○○協会」みたいな名称の団体がありましたが、これを指す言葉が、狭い意味での社団法人です。

しかし、平成20年12月に新公益法人制度がスタートして、旧民法に基づく社団法人の呼び方は、正式には「特例社団法人」と変わりました。

そして、平成25年11月末をもって、特例民法法人の移行期間は満了して、一般社団法人か公益社団法人に移行しています。

そのため、インターネット上などで「社団法人」という言葉が出てきたときに、どのような意味で「社団法人」という言葉を使っているのか注意する必要があります。

例えば、

  • 一般社団法人のことを、略して社団(法人)という言葉で説明している。
  • 公益社団法人のことを、略して社団(法人)という言葉で説明している。
  • 旧民法に基づく従来の公益法人(特例社団法人)のことを、略して社団(法人)という言葉で説明している。
  • 「広い意味の社団法人」について何らかの議論をしている

少なくても、このような4通りの可能性があります。

なお、法人名称の略称については正式な決まりはありません。

行政の文書などでは、

  • 一般社団法人⇒(一社)
  • 公益社団法人⇒(公社)
  • 特例社団法人⇒(特社)

このように省略されていることがありますが、略称が法律で決まっているわけではありません。

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財団法人とは?

法律の教科書に載っているような「財団法人とは、財産の集合で…」

みたいな定義から説明をしても、理解できる人はいないと思います(笑)

そこで、ここでも「財団法人」の定義から説明するのではなく、「財団法人」が果たす機能・役割の点からご説明します。

「財団法人」という仕組みは、どういう場面で使うものなのか?

これが分かれば、

「財団法人」と「社団法人」のどちらを選べばいいのか?

みたいな疑問にはだいたい答えがでます。

簡単に言えば、財団法人という仕組みは、自分の財産の運用・処分を他人に任せたい時に使う制度です。

例えば、自分の財産を、何らか目的(例:社会貢献)に使いたいと考える人がいたとします。

しかし、自分にはお金はあるけど、時間がなくて(仕事や寿命で)、財産を利用した社会貢献を他人に任せたいと思うこともあるでしょう。

また、財産を保有していても、どのように財産を使えば効果的な社会貢献になるのか分からないこともあります。

そうすると、自分で財産を保有したままの状態よりも自分は財産を手放して(寄付して)、自分よりも効率的に財産を管理運用して社会貢献できる人に財産の管理を委ねた方が合理的だということになります。

そこで問題になるのが、一体だれに、自分の財産を委ねるのか?

ってことです。

信頼的できる特定の個人に自分の財産を委ねるという選択肢もあるでしょう。

でも、信頼的できる特定の個人がいない場合もありますよね。

その場合には、

自分の財産の使い方を委ねるための法人を、自分で設立する

という選択もあるのです。

一定の目的(例えば、社会貢献など)のために財産の管理運用任せられる法人を、自分で設立できると便利ですよね。

それが財団法人なのです。

財産を出す人(=財団法人の設立者)は、その財産を完全に手放すことになります(所有者ではなくなる)。

しかし、財産を寄付する相手となる法人はまだ、存在していませんよね。

財産を手放しても、受け取ってくれる法人がまだ存在していないわけです。

そこで、自分が手放した(寄付した)財産そのものが法人(=財団法人)になってしまうという状態を認めたのが財団法人という制度なのです。

財産の拠出者は、財団法人の設立時に、信頼できる人物を、財団法人の理事や評議員として選びます。

しかし、拠出された財産の所有権が、理事や評議員にあるわけではありません。

あくまでも、拠出された財産そのものが法人(財団法人)であり、理事や評議員は、財団法人に雇われているという関係(正確には、委任契約の関係)です。

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財団の設立者(財産の拠出者)は、財団設立後の運営には関与しなくていい

ここまでの説明で、「財団法人設立」のイメージが少しは持てたでしょうか?

財団法人を設立するってことは、

自分の財産を手放して、

「このお金(財団法人)で社会貢献活動してね!」

「お金の使い方(財団法人の運営)は、私が選んだ信頼できる人(理事や評議員)に任せます!」

「私は後のことは知りません!」(完全離脱)

このような状況です。

財団の設立者(財産の拠出者)は、必ずしも財団設立後の運営には関与しなくていいのです。

もし、財団設立後の運営に関与したい場合は、財団法人設立時点で、財産拠出者が自分自身を財団法人の理事や評議員に選ぶことはできます。

そうすると、財産拠出者は、財団法人設立後も、理事などの立場で財団法人の運営に関与することができます。

例えば、企業が資金を拠出して財団法人を設立するような場合、この設立者たる企業の代表取締役が財団法人の理事に就任したりすることがあります。

しかし、このように、財産拠出者が財団法人設立後に財団の運営に関与することは義務ではありません。

例えば、高齢の科学者が、

「自分が死んだら、自分の遺産で科学の発展に貢献して欲しい」と希望したとします。

その場合、遺言書に「自分が死んだら、自分の遺産で科学の発展に貢献する財団法人を設立して欲しい」という内容を書くわけです。

自分が死んだら、自分の死後に設立される財団法人の運営には一切関与できませんが、それでいいのです。

一定の目的を達成するために自分の財産を他人に任せる仕組みが財団法人という制度だからです。

ちなみに、法律学の世界では、「財団は信託と類似の機能を果たす」なんていわれます。

信託を知っている人は、信託に近い制度だとイメージして頂くと理解が早いと思います。

財団法人は常に非営利

社団法人には営利社団法人(株式会社など)と非営利社団法人(NPO法人や一般社団法人など)の2つがあり得えます。

では、財団法人に営利目的の財団法人があるのでしょうか?

結論としては、財団については非営利の財団しかあり得ません。

財団法人は、あくまでも財産が中心の法人です。そのため、「構成員」という概念がありません。

ですから、「構成員に剰余金を分配する」という意味での営利目的はあり得ないことになります。

このことは、政府が主催の公益法人制度改革に関する有識者会議において、民法学の大家である能見善久先生(当時、東京大学教授)が以下のように述べられています。

「財団法人というのは社員がいないので、利益を社員に分配するということはあり得ないのです。ですから、財団法人の場合には概念的に常に非営利なのです。」

※第8回公益法人制度改革に関する有識者会議(平成16年3月22日)議事録より

社団法人と財団法人の違い(まとめ)

ここまで社団法人と財団法人の役割・機能についてご説明してきました。

社団法人と財団法人の違いについては、能見善久先生が非常に分かりやすく述べられていますので、最後のまとめとして引用します。

社団法人というのは人々が集まって何かやろうという活動を促進、支援するための制度です。しかし、財団法人というのは最初に財産を出す人の意思が強く働くものでございまして、団体活動の自由の促進というよりは財産の自由な使い方を支援する制度なのではないかと考えております。

※第8回公益法人制度改革に関する有識者会議(平成16年3月22日)議事録より

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